摩訶不思議探偵局〜魅惑の恋人たち〜
容疑者リスト
ユーマ(ゆーま)…【南の恋人】
南 百子(みなみ ももこ)…【ユーマの恋人】
恩田 悠(おんだ ゆう)…【二階堂の恋人】
二階堂 絵真(にかいどう えま)…【恩田の恋人】
天木 大地(あまぎ だいち)…【ペンションオーナー】
天木 空恵(あまぎ そらえ)…【オーナー夫人】
摩訶不思議探偵局〜魅惑の恋人たち〜登山編
真実「兜警部、明日はどうするんですか?」
濡れた髪を拭きながら、真実が聞いた。
ここは、兜の部屋。真解たち4人は、ここに集合していた。ちなみに、真実の髪が濡れているのは、さっきまで温泉に入っていたからだ。
兜「今日同様、特に予定はない」
火の無いタバコをくわえながら、兜は無責任な事を言った。タバコに火がついていないのは、他でもない。真実に「禁煙!」と言われてしまったからだ。一応部屋に灰皿はあるが、真解たち(少なくとも真実)がいなくなるまで、タバコに火をつけることは出来ないだろう。
謎事「ここら辺、ホントになんにも無いんだなぁ…」
床に地図を広げ、四つんばいになりながら、言った。メイも真解も、地図の横に座って観光できそうなところを探しているが、周りは森ばかりだ。少なくとも、「自然がいっぱい」と言うキャッチフレーズだけは、嘘ではない。
突然、ビュッと冷たい風が入って来た。真実が窓を開けていた。
真実「涼し〜! 星も綺麗だし!」
「自然いっぱいだね!」と、真実が嬉しそうに言う。
真実「あ、ミカンだ。ねぇねぇ、ミカンが生えてるよ!」
真実は窓から身を乗り出していた。左側を指差し、真解に来るように促す。「はぁ…」とため息をついて、真解は立ち上がった。
真解「どれ?」
と、真解も身を乗り出す。謎事も興味ありげに、後ろから覗き込んだ。
真実が指差す方を見ると…確かに、柑橘類独特の、長く鋭いトゲのある木が、すぐ近くに生えている。が、果実はなっていない。
謎事「ミは…無いんだな」
真実「そうねぇ、ちょっと残念」
真解〔なってても、手、届かないだろ〕
真実「そうねぇ…隣の部屋なら届きそうだけど」
何故か真解の心を見透かし、真実が相槌を打つ。「隣は確か…」と記憶をまさぐり、
真実「南さんと、ユーマさんの部屋か」
と、呟いた。
真実「いいなぁ、今度、あの部屋に泊まりたい」
兜「部屋番号の指定までは出来ないぞ、ここ」
真実「ちぇ。10部屋だから、確率は10%かぁ…」
真解〔それに、仮になっていたとしても、取っていいのか? そして、食べられるのか? それは…〕
それは、実際に泊まってみないとわからない問題である。
次の日の朝
ドンドンドンドンドン!!
けたたましいノック音で、謎事は目が覚めた。窓からは、朝日が射し込んできている。
ドンドンドンドンドン!!
けたたましいノック音は、止まらない。時計を見ると、午前7時30分。謎事は、ベッドから降りた。
真実「おにーちゃ〜ん、めーじく〜ん、起ーきーてー!!」
他の部屋の人に迷惑だろう、と謎事は一瞬思ったが、よくよく考えると、「他の部屋の人」とは、兜と、ユーマたちだけだ。迷惑と言えば迷惑だが、全くの赤の他人でない分、ましだろう。
真実「はーやーくー!! 8時までに食堂に行かないと、朝ご飯抜きになっちゃうんだよ!!」
謎事「わかったわかった!! 着替えるから待っててくれ!!」
真実「この部屋ユニットバスあったでしょ。謎事くん、このドア開けて、ユニットバスで着替えてよ!」
なんでだ…と思ったが、とりあえず従う事にした。ガチャッとカギを開ける。
バン!!
同時に、真実が勢い良くドアを押し開けた。謎事は、ドアに顔を強打した。
謎事「ま…真実…お前…」
顔を抑え、うずくまる謎事。しかし、真実はそんなもの全く気にせず、まだ眠っている真解の横に、しゃがみこんだ。じっと真解の顔を覗き込む。
謎事「まだ寝てるぞ」
謎事が顔を抑えながらそう言うと、「そうみたいねぇ…」と真実は小さく呟いた。
そして、真実は前かがみになると、真解の唇に、自分の唇をそっと近づけ…
謎事「って何やってんだ、まさみぃ!?」
真実「冗談に決まってるでしょ」
「全く…」文句を言われた。
真実「いいから、早く着替えてきてよ。あと20分しかないんだから!」
自分の腕時計を叩いて、真実が急かす。「わかったよ」と、謎事は着替えを持って、ユニットバスに入って行った。
真実「……。さてと…」
謎事がユニットバスに入ったのを確認し、真実は真解のベッドの掛け布団を除けた。そして、ベッドの上に載り、真解を乗り越える。そこにしゃがみ込み、真解の顔をじっと見た。安らかに、眠ってる。
真実「…よっこいしょっと!」
ドタン!!
ユニットバスの中で、謎事は、何かが落ちる音を聞いた。まるで、寝ている人間が、ベッドから床に叩き落されたような…そんな音だった。
謎事「そう言えば、真解って、朝苦手だったな」
紅茶をカップに注ぎ、謎事は席に座った。
真解「・・・・・・・・・」
真解は不機嫌そうな顔のまま、紅茶をカップに注ぎ、謎事の向かいの席に座った。
ここは食堂。真解、真実、謎事が食堂についた時、そこには既に、ユーマたち4人と、メイがいた。メイは1人で4人掛けのテーブルに座っており、既に食べ始めていた。ユーマたち4人も、別の4人掛けのテーブルで、先に食べ始めていた。あといないのは、兜だけだ。
謎事「確か、修学旅行ん時も、真実が部屋に乗り込んできて、叩き起こしたんだよな?」
真実「そうそう。いつもはベッドから突き落としてるけど、修学旅行の時は、ベッドじゃなくてお布団だったから、起こすのに苦労したわ」
あっけらかんと笑う真実を、真解は不機嫌そうな顔で見た。本人は睨んだつもりなのだろうが、眠くて気力が出ないのか、睨んでいるようには見えない。
兜「お、もう全員集まってるか」
最後の客、兜が食堂に入って来た。
真実「兜警部、一番遅いですよ!」
兜「ああ、ちと寝坊してしまったな」
そう言うと、兜は朝食をもらいに、食堂の一番奥へと向かった。
兜「どうも、兜ですが…」
大地「ああ、兜さん。おはようございます」
軽く会釈し、大地は朝食を兜に手渡した。
大地「大丈夫です。今日は塩も砂糖もコショウもカラシも全く間違ってません」
どことなく得意気に言う大地。「得意気に言われてもな…」と兜は思ったが、「そうですか」と笑顔で答えた。しかし、このメニューのどこにコショウとカラシを使うのか、兜にはわからなかった。
二階堂「皆さん、今日は何か予定、あるんですか?」
半分ほど食べた頃、二階堂が近付いて聞いて来た。向こうのグループは、既に全員食べ終わっている。こっちが、異常に遅いのだ。
真実「それが、何にも無いんですよねぇ」
パク、とトーストをかじる。何も無い、と言っても、「予定が何も無い」のではなく、「行ける場所が何も無い」のだが。それは、昨日地図で確認した。となれば、向こうの4人も、特に楽しい場所は知らないと思われるが…?
二階堂「じゃぁ、今日もあたし達と一緒に行く?」
楽しそうに、可愛らしく、二階堂が聞く。と、言われても、どこか行く場所があるのか?
謎「どこか…良い所はあるんですか?」
「昨日、地図を見ても特に何もなかったのですが…」と小声で付け加える。「大丈夫」と、二階堂が得意気に言った。
二階堂「去年、車で走り回って見つけた、絶好のポイントがあるのよ! 地図には一応載ってるけど、地味にしか書いてないのよ」
兜「ほぅ? と言うと?」
二階堂「地図の上だと、ただの山なんですけど、登ってみると、すっごい綺麗な景色が見えるんですよ!」
真解〔なるほど…そういう意味か…〕
真実「じゃ、早く食べて行こ!」
言うや否や、真実は大急ぎで食べ物を口に詰め込んだ。
昨日乗ったのと同じ、ユーマのワゴン車で、真解たちはその山とやらに登っていた。歩いて歩けないことは無いが、昼までに降りられるかどうか不安なので、途中まで車で登る事にしたのだ。
車は舗装されていない道を走っているため、かなり揺れる。真解は、頭がガンガンしてきた。
真解「すごい揺れですね…」
恩田「そこなんだよ。ここの唯一の欠点は」
ユーマ「まぁ、もう少し行ったところに駐車場があるから」
真解〔そのあとは、足で登る…と〕
ユーマの言ったとおり、数分で駐車場が現れた。砂利の上にボロボロのロープで区切られたスペースがいくつかあるが、車は一台も停まっていない。ユーマはそのうちの一区画に車を停めた。
車が停まると、全員、わらわらと車から降り始めた。銘々、自分のバッグを持ち、山の空気を吸い込んだ。
南「じゃぁ…行きましょ」
南が言い、みな揃って頂上を目指して歩き始めた。ここから頂上までは、それほど遠くない…と、恩田が言った。
そして、その通りだった。
突然、前方が開け、頂上にたどり着いた。辺りには綺麗な高山植物が咲き乱れ、地面を彩っている。顔を上げれば、広大な景色…山々や、小さな街を見る事が出来る。とにかく、筆舌に尽くせない…言葉では表現しにくい美しさ。
真実「すご〜い! お兄ちゃん! 綺麗だよ!!」
その分、真実の反応で、その美しさを感じ取ってもらえれば、ありがたい。
真実はバッグを背中に背負ったまま、その場を走り回った。普段もそうだが、こう言うところに来ると、真実は一気に幼児化する。心理学的には、「退行」と言うらしい。
辺りには、ごつい岩もチラホラ転がっていた。真実はその中で一番大きな岩に身軽に登り、周りの景色をより一層眺めた。
どうでもいいが、「石」と「岩」の違いを調べた事があるのだが、結局未だによくわからない。どの資料にも、「大きいのが岩。小さいのが石。もっと小さいのが砂」としか書かれておらず、明確な違いが載っていなかった。もしかしたら、明確な定義が無いのかも知れないが。
真実「ねぇ、お兄ちゃんも登って来なよ! 綺麗だよ!!」
真解「遠慮しとく…」
真解は疲れていて、それどころではなかった。
真解は普段運動しない訳でもない。ハッキリ言って、普段パソコンばかりやっている真実より、運動しているつもりだ。だが、何故か真実の方が運動能力も、体力も高い。先天的な、遺伝的な、とにかく、元々の素質が違うのだろうと言う事で、真解の中では落ち着いている。
ユーマ「どうだ? 良いところだろう?」
自慢げにユーマが聞く。「はい!!」と真実が元気よく答えた。「そうッスねぇ」「そうですね」と謎事もメイも答えたが、真解には答える気力も無かった。もしかしたら、車に酔ったのかも知れない。だが、誰もそれを気に留めはしなかった。
謎事「確かに、良いところだなぁ」
謎事は改めて言い、仰向けに寝た。両手を広げて空を見上げる。本日は快晴。素晴らしい天気。
余談だが、「快晴」「晴れ」「曇り」は雲の量によって分けられている。雲が、空全体の1割以下だと「快晴」。雲が1割より多く、8割以下だと、「晴れ」。雲が8割より多いと「曇り」だ。
兜も適当な岩を見つけ腰を下ろし、真解は仕方ないので、真実の岩の横に腰を下ろした。メイは、謎事のすぐ近くで、謎事とは全く反対の方向を見ている。
謎事〔嫌われているのか、好きで近付いてきてるんだけど恥ずかしくてこっちを見ないのか、それとも偶然そこに立って、向こうの景色を見ているのか……〕
メイの後ろ姿をチラチラ見ながら、謎事は色々考え込んだ。
一方、ユーマも恩田も、1人で全く関係の無い場所に腰掛け、南と二階堂は、やはり謎事の近くに立ち、楽しげに話していた。会話の内容は、目の前の植物たちらしい。謎事は特に興味が無かったので、ボーッと空を見上げていた。あくびが出てくる。
二階堂「ねぇモモ。確かあなた、高山植物詳しいんでしょ? これ、なに?」
二階堂が座り込んで、南を見上げた。南も横に座り込む。二階堂の手には、高さ20cm程度で、丸い実のような物をつけた草が握られている。
南「ああ、これ、スズランよ。花じゃないからわかりにくいけど」
二階堂「へぇ。スズランってこんな実なんだ。…………」
じっと、その実を見つめる二階堂…。
南「ど、どうしたの?」
思わず、南は問いかけた。
二階堂「え? これ、食べられるかなぁって。どう?」
南「さぁ…食べてみたら?」
南が小首を傾げる。「じゃぁ…」と、二階堂は恐る恐る実を採った。
謎「ちょ、ちょっと。それ、毒ですよ」
メイが慌てて振り返って言った。すぐ近くにいてよかった…。もしいなかったら、二階堂はスズランを食べていたかも知れない。
二階堂「ど、毒なの!?」
謎「ええ。確か、コンバラトキシンと言う物質が、全草に含まれているはずです…。もし食べれば、最悪、心臓麻痺で死亡します」
二階堂「へぇ…。あっぶな〜い。食べなくて良かった」
ポイ、と何の気なしに、二階堂はその実を捨てた。
謎事「※∞∀∂ЦΛΘ!」
謎事が慌てて起き上がった。二階堂が捨てた実が、あくびをしていた謎事の口に見事に入っている!
二階堂「キャァッ!? ごめんなさい、大丈夫!?」
謎事はすぐさま実を吐き出し、喉に手をやりながらペッペッと何度もツバを吐いた。
二階堂「だ、大丈夫!? 死なない!?」
南「心不全とか、頭痛とか、目まいとか、吐き気とか、しない!?」
南もオロオロして謎事を見る。メイだけ、冷静にその様子を見つめていた。
謎「…大丈夫だと思いますよ? 何しろ、スズランの花言葉は、『幸福が訪れる』ですから」
それだけサラリと言うと、メイはその場を立ち去って、真実のいる岩まで歩み寄った。
謎事「め、メイちゃ…」
泣きそうな顔で、謎事はその後姿を見つめた。
Countinue
〜舞台裏〜
ああ、長いなぁ…。今回のゲストは、花言葉も知っていた事河 謎ちゃん。
謎「こんにちは」
でもメイちゃん、アレはひどいよ。
謎「何故です?」
いや、だって、何故って…ねぇ?
誰も殺されないまま3編目突入。
謎「本当に長いですね…」
まぁ…うん。ちょっと色々事情が…。
謎「事情?」
うん…。まぁ、そのうちわかるよ。絶対。
では、また。
「摩探公式HP」⇒【http://page.freett.com/kiguro/makahusigi/index.html】
作;黄黒真直
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