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「裸で寝た方が温かい」は本当か?
1;問題提起
「チョコレートを食べ過ぎると鼻血が出る」とか、「大風が吹くと桶屋が儲かる」など、
「昔からよく言われてるけど本当かウソかよくわからない」ことは割りと多いと思われる。
で、今回はそのうちのひとつ、「裸で寝た方が、服を着て寝るより温かい」について調べてみる。
この話も昔からよく耳にする事で、私はいままで特に疑う事なく「そうなんだぁ」と信じてきたのだが、
(東北地方では実際に裸で寝ているとも聞く。東北地方出身の方、真偽のほどを教えてください)
先日大学の授業で「それはたぶんウソだと思われる」と言う話が出たので、実験して確かめる事にした。
2;準備
今回の実験として一番理想的なのは、服を着た状態と裸の状態で一晩眠り、布団内部の温度変化を連続的に調べることだが、
残念ながら私はそれに適した機材を持っておらず、またそれを買う資金もないので、普通の気温計を購入した。
写真1 2本で734円
では、準備完了。早速実験に移ろう。
3;実験
今回の実験で知りたいのは、正確には「布団内部の温度」ではなく「体の表面に触れる空気の温度」である。
なので、着衣で寝る場合は服の中に温度計を入れる事になる。
また、着衣と裸で温度計を置く場所が違っては困るので、これも予め決めておく。
脇の下や膝の下など色々考えたが、実験のやりやすさと言う面から、腹の上に乗せる事にした。
正確には、液球をヘソの上に、他端をみぞおちの方へ向けて置く事にする。
さらに計測時間も同じにする必要があるので、今回は30分としよう(少し短い気もするが)。
そして30分後の外気温と布団内部の気温との差を調べ、裸と着衣、どちらが温かいのかを調べる事にする。
なお、この30分間は両手を胸の上に置き、足を投げ出した状態で微動だにしないものとする。
これで条件は整った。いよいよ実験開始である。
まず普通に寝巻きを着て、布団に潜る。そして服の中に温度計を入れた。
そのまま30分微動だにしない。
……非常に暇な実験である。
眠くなるのを堪えながら(実験は夜9時過ぎに行った。正確な時間は記録し忘れたので忘れた)、30分経過。
その後布団を剥ぎ、常温に下がるまで1時間待つ。
1時間と言うのになんら物理学的根拠は無く、ただ単にテレビを見ていただけである。
そして1時間後。今度は服を全て脱ぎ去り、布団に潜った。
さあ、ここからが本番である。
裸で布団に入ると、なんとなく妙な感じがする。
これは慣れの問題だと思われるが、くすぐったいような気がして、微妙に不愉快である。
裸で寝た際の個人的な感想は、あとで詳しく書くとしよう。
こうして30分寝た結果、外気温と布団内部(体表面)の温度は以下の[表1]のようになった!
[表1]裸で寝たときと服を着て寝たときの温度
| 外気温[℃] | 内気温[℃] | 内−外[℃] |
| 着衣 | 寝る前 | 25 | 26 | 26-25=+1 |
| 寝た後 | 25 | 37 | 37-25=+12 |
| 裸 | 寝る前 | 26 | 26 | 26-26=0 |
| 寝た後 | 24 | 35 | 35-24=+11 |
少々見づらい表になってしまったが、注目すべきは一番右の太字になった半角数字である。
外気温との温度差が、裸よりも服を着た方が大きい。
これはすなわち、服を着た方が温かくなる、と言う事である!
以上で、実験終了である。
4;実験その2
本当にそうか?
もう一度、上の表を見ていただきたい。
寝た後の布団内部の温度は、着衣が37℃、裸が35℃。
35℃〜37℃と言うのは、我々にとって非常に馴染みのある、ある数字に似ていないだろうか。
そう、体温である。
今回の実験で私は、体に直接温度計を置いた。
つまりこの実験で温度計は、布団内部の温度ではなく私の体温を測っていた可能性があるのだ。
と言うか、確実に測っている。
友人にもそう指摘されたので、仕方がない。もう一度やってみよう。
要は、体を温度計に触れさせなければよいのだ。
そしてできれば、温度計と体の間に断熱材を挟みたい。
というわけで、近所のスーパーから発泡スチロールを貰ってきた。こいつを体と温度計の間に挟もう。
まず発泡スチロールカッターで発泡スチロールを適当な大きさに切断し、
実験中にずれることが無いように温度計を発泡スチロールにセロテープで固定した。
写真2 発泡スチロールに固定した温度計(下)と発泡スチロールカッター(上)
写真2 発泡スチロールに固定した温度計を横から見た図
なおこの写真の発泡スチロールカッターは、私が小学生の頃購読していた学研の『学習』97年8月号の付録である。
そして発泡スチロールの幅は、約2cm。これだけあれば十分だろう。
では、これを再び腹の上に乗せて、同様の実験を行おう。
まず着衣の状態で布団に入り、30分間横になる。
猛烈な眠気と対抗していると……。
寝てしまった。
起きたのは1時間20分後。予定の30分を超過してしまった。
…まあいい。本来は一晩中測るべき物なのだから、長い方がよいに決まっている。
その代わり、裸で寝るときも1時間20分寝る必要がある。
ここでまた30分ほど布団を室温で冷やし、今度は裸になって布団に入る。
1時間20分寝ているつもりだったが、寝ているうちに飽きてきたので1時間で切り上げた。
そして、その結果が以下の[表2]である
[表2]裸で寝たときと服を着て寝たときの温度2
| 外気温[℃] | 内気温[℃] | 内−外[℃] |
| 着衣 | 寝る前 | 20 | 20 | 20-20=0 |
| 寝た後 | 20 | 30 | 30-20=+10 |
| 裸 | 寝る前 | 20 | 20 | 20-20=0 |
| 寝た後 | 20 | 29 | 29-20=+9 |
うっわ、微妙…。
またしても見づらい表になってしまったが、注目してほしいのは一番右の太字になった半角数字である。
外気温との温度差を表しているわけだが、着衣と裸との温度差は1℃。
先の『実験その1』でも、着衣と裸の温度差は1℃であった。
微妙な差ではあるが、それでも2回とも着衣の方が1℃高かったことから、「着衣の方が温かい」と言えそうである。
最後は私の感想に頼ろう。
そもそも今回の目的は、「裸で寝た方が温かいか?」であったわけだが、あくまでこれは「体感温度」である。
今回測定した「気温」と「体感温度」と言うのは異なる。
では、どうだったか。
結論から言うと、「服を着た方が温かい」。
裸で寝ても服を着て寝ても、大差ないといえば大差ないのだが、まず温まるまでに時間がかかったように思える。
そして仮に温まっても、その後すぐに冷えてしまう。
これは、外気が布団の中に入ってくるからだ。
布団が動かず、外気を完全に遮断している間はいいのだが、
少しでも体を動かすと(つまり、寝返りをうつと)外気が布団の中に入り、急激に寒くなる。
服を着ている場合、外気が直接肌に触れることが無いためあまり感じないが、
裸の場合は布団以外に外気を防ぐものが無いため、一気に寒くなったように感じたのだ。
ただし布団を動かないようにして外気を完全に遮断すれば、服を着たときと差はないと思われる。
実際、体を動かしていないときはさほど寒くは感じなかった。
5;結論
と、言うわけで結論!
裸で寝た方が温かい、はウソである。
服を着た方が、布団の中に入ってきた外気が直接肌に触れず、寒さを感じない。
ただし、外気さえ入ってこなければ、裸で寝ていても服を着た時と対して変わりはしない。
6;考察
しかし、ではいったい何故「裸で寝た方が温かい」などと言われるようになったのだろうか。
今回の実験の動機となった授業では、「裸の方が解放感があって気持ちいいから、そう言われるようになったのでは」と言っていた。
だが実際に寝てみると、裸だからと言って気持ちいいかといえば、そうでもないような気がする。
もちろん、これは慣れの問題もあるだろうが、服を着ているのと大差は無い。
まず裸で寝ると、毛布がくすぐったい。
次に、汗のにおいである。
服を着ていれば軽い汗のにおいなら服が防いでくれるが、裸だと寝返りをうつなどした時に汗のにおいが感じられた。
(ちなみに温度測定のあと、温度計を持たずに裸で寝てみたので、寝返りをうつなど色々な動作を試せた)
また、少しアレな話になるが、股間が邪魔である。
(実は)普段下着で固定されていたらしく全く気にも留めなかった男性器が、寝返りをうつたびにチョコマカ動いて気持ちが悪い。
もっともこれは男性だけの悩みであるので、女性なら問題ないかも知れない(胸が邪魔かもしれないが)。
と、こうなってくるとますます「裸で寝た方が温かい」などと言われだした理由がわからない。
調べてみた結果、次のような説を発見した。
「裸で寝ると寒いが、毎日裸で寝る事で寒さに強くなり、寒さを感じにくくなる」
要するに、訓練である。
毎日運動する事で運動能力が伸びるのと同様に、毎日寒い格好でいる事で寒さに強くなろうと言う事らしい。
と言う事は、私の今回の実験結果(裸の方が寒い)は正しく、しかし間違ってもいる。
今回は実験を2回しか行わなかったが、これを毎日毎日行う事で、寒さに強くなれるので、相対的に温かく「感じる」と言う事である。
これが本当に正しいかどうか知るためには、実際に裸で寝続ける必要があるだろうが、
男性器が動き回るのが気になるので、女性の実験協力者が現れるのを待つ事にしよう。
……いや、決して変な意味ではなくて。
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