サリンとは何か?
第2次世界大戦中、あらゆる化学兵器(つまり毒ガス)が開発されました。
そのうちの1つが、通称「サリン」と呼ばれる物。
正式名称(和名)は、「O(オルト)‐イソプロピルメチルホスホノフロリダート」や「イソプロポキシメチルホスホリルフルオリド」と言います。
サリン(Sarin)と言う名前は、開発に関わったシュラーダー (Schrader)、アンブロス (Ambros)、ルドリゲル (Rudriger)、ヴァン・デア・リンデ (Van der LINde) の名前を取って名付けられました。
化学式は、(CH3)2CHOPOFCH3です。
無色無臭の毒ガスで、戦争用に開発されただけあって、ものすごい殺傷能力を持ちます。
「毒ガス」と言うと、普通、口から吸い込むものですが、サリンは皮膚から体の中に浸透する事もできるのです。
そしてすぐに、神経に障害を起こします。
自覚症状としては、まず最初に目がチカチカするなどの異常が起こります。
これは、瞳孔(目の黒い所。瞳)が収縮する事で起こる異常です。
次に涙が止まらなくなったり、くしゃみや鼻水などの障害が起こり、呼吸困難になる事もあります。
その他に、頭痛やめまいがしたり、吐き気を催したりし、
さらには意識がモウロウとして(意識障害)、言葉を上手く喋れなくなったり(神経障害)、錯乱状態になったり(精神障害)します。
また、よだれが止まらなくなったり(垂涎)、汗が止まらなくなったり(発汗)もします。
そして重度になると、全身痙攣を引き起こし、最悪の場合死に至るのです。
サリンは人体に入ると、どのような働きをするのでしょうか?
人間(動物)の体の中には、神経が通っています。
脳から体に対する「動け」と言う指令は、この神経を伝わって届きます。
その時使われるのが、「神経伝達物質」と言う物。
神経伝達物質のうちの1つに、「アセチルコリン」と言う物質があります。
アセチルコリンは指令を伝え終わった後は、コリンエステラーゼと言う酵素によって分解されます。
ところが、サリンはこのコリンエステラーゼと結合し、コリンエステラーゼの働きを邪魔します。
すると、アセチルコリンはいつまでも指令を伝え続けるため、筋肉がいつまでも動き続けたり、脳がパニックを起こしたりするのです。
そして引き起こされるのが、上記のような症状です。
サリンの致死量(人間)は、体重1kgあたり0.1〜0.001mgと言われています。
体重60kgの人なら、6〜0.06mgで死亡してしまう、と言う事です。
また、サリンは空気より重いため、風などで飛ばされにくく、その場に留まりやすい、と言う性質を持っています。
広範囲での殺傷は出来ない、と言えますが、逆に言えば、狭い範囲にいる大勢の人間を殺す事が出来る、と言うことです(ただし、濃度を小さくすれば広くばら撒く事も出来ます)。
ただし、サリンにも1つ弱点があります。
サリンは、化学的に非常に不安定な物質で、水と触れただけでその毒性を失ってしまいます。
その時出来る物質は、フッ化水素とメチルホスホン酸イソプロピルです(さらに後者は、メチルホスホン酸とイソプロピルアルコールになります)。
ですが、実を言うとフッ化水素も強力な毒物。スプーン1杯のフッ化水素を間違って飲んでしまい、死亡した事件もあります。
また、ほとんどの化学物質と反応しないガラスでさえ、フッ化水素となら反応し、腐食してしまいます。
どちらにせよ、サリンとは非常に危険な毒物で、日本では「サリン等による人身被害の防止に関する法律」によって、所持・生産が禁止されています。
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