心理学的「正しい叱り方」
高校野球では、こんなシーンがあります。
監督が、エラーをした生徒を自分の所へ呼びつけて、相手の目をじっと見ながら注意を与え、それが終わると生徒の肩や背中をポンと軽くたたいて送り出す…。
一見、なんでもないシーンですが、実はこれ、心理学(正確には「近接心理学」)の観点からすると、実に理にかなった叱り方なのです。
ポイントは3つ。
第一に、叱る相手を自分の近くに呼びつけること。
第二に、相手としっかり視線を合わせること。
第三に、叱った後で相手の体に軽く触れたこと、です。
1つずつ見ていきましょう。
第一のポイント。叱る相手を近くに呼びつけること。
人は、自分より立場が上の人間や、強そうな人間の近くに寄ると、逃げられないような緊張感を覚えます。
例えば、説得する時なども、相手に近づいて熱心に説得すると、成功する確率が高くなります。
これと同じように、相手の精神をしっかりとこちらに向けることが出来るのです。
第二のポイント。相手としっかり視線を合わせること。
この行為は、相手の気持ちを注意そのものに集中させることができるのです。
例えば、子どもに物語を読み聞かせるとき、「子どもの目をしっかり見ながら話してやると、しばらく経ってもその物語の内容をよく覚えていた」と言う研究データがあります。
これと同じように、目を見て叱ると、相手の意識にちゃんとその内容が入るのです。
つまり、「馬の耳に念仏」状態にならない、と言うわけです。
第三のポイント。叱った後で相手の体に軽く触れたこと。
体に触ると、触った相手によい印象を与えられるということが、アメリカの実験で証明されています。
複数の人に「初対面の人物(どんな人物なのか全くわからない人)」と「目隠しして握手するだけする」ときと、「顔を合わせるだけ」のときとでは、その相手の印象がまるで違うのです。
握手だけした人は、相手が「あたたかくて信頼できる人」「大人らしくて、感覚の鋭い人」など、良い評価を出しました。
しかも、48%の人が、再会を望んだのです。
それに対し、顔を合わせただけだと、「冷たくて横柄な人だ」と悪評を下したのです。
相手の体の一部に触れる、『タッチング』は、自分の感情を最も正確に伝えるコミュニケーションだと言われています。
生徒を叱りっぱなしだと、「監督は冷たい人だ」と思われかねませんが、叱った後で軽く背中などを叩くと、
「厳しく叱られたが、それは監督の愛情からなのだ」
と言うように、その印象がガラリと変わるのです。
この3つの原則は、監督と選手以外にも、親と子、先生と生徒、上司と部下などの関係にも当てはまるものなのです。
この三原則を守って叱れば、相手に自分に対する悪い印象を持たせず、かつ相手をキチンと叱ることが出来るのです。
戻る