補足。何故光速を超える事は出来ないのか?
ここまでの説明の中で、「光速を超える事は出来ない」と言う表現があったかと思います。
既に何度か述べたように、光の速さはおよそ秒速30万km。
全ての物体は、これ以上速くなれない、と言っているのです(水の中など、条件が揃えば、光より速く進む事は出来ますが、秒速30万kmの壁を超える事は不可能とされています)。
では、何故超えられないのでしょうか?
E=mcと言う、有名な公式があります。
Eとはエネルギー(単位;J〔ジュール〕)、mは質量(単位;kg)、そしてcは、光速=30万km/秒です。
この公式が意味するところは、
「ある物体が持つエネルギーは、その物体の質量と、光速の二乗(=30万×30万=90億)をかけた物になる」
と言う事です。
さて、ここで言う「エネルギー」とは、実に様々な物を含みます。
そのうちの1つに、「運動エネルギー」と言うものがあります。
「運動エネルギー」とは、「運動している物体(=移動している物体)が持つエネルギー」の事。
例えば、殴られた時痛いのは、動くこぶしが持つ運動エネルギーのせいですし、車にはねられると重症を追うのは、走る車の持つ運動エネルギーが、とても大きいからです。
そして、運動エネルギーとは、基本的にその動きが速ければ速いほど大きくなります。
つまり、ある物体を加速させればさせるほど、ものすごい大きな運動エネルギーを持つ事になるのです。
ところで、この式の意味。実は、先ほど述べたのは正確ではなく、正しくは、
「物体のエネルギーと質量は、互いに関係している」
と言う意味になります。
つまり、物体が重くなれば重くなるほどエネルギーが増すし、エネルギーが増せば増すほど物体が重くなっていくのです。
では、ここで、ある物体Xを加速し、光速を超えさせようとしたとします。
初めは順調に加速を始めた物体Xですが、次第に変化が現れてきます。
加速させるためには、後ろから押すなど、何らかの力=エネルギーが必要になります。
段々、加速させるために必要なエネルギーが、増えてきたのです。
軽い物体と重い物体。どちらの方が、動かすのが大変でしょうか?
考えるまでもなく、重い物体です。
速さが増す、と言う事は、エネルギーが増すことであり、それは同時に質量が増すことに他なりません。
質量が増すと、その分、加速させるために必要なエネルギーは増えていきます。
段々と物体が速くなり、その速度が光速に限りなく近付くと、加速に必要なエネルギーは、莫大なものになります。
そして理論上、その物体を光速にするためには、無限大の力が必要になるのです。
当然、「無限大の力」なんてものは存在しませんから、光速を超える事は、理論上絶対に不可能、となるわけです。
ただ、「もし超えられたら…」と言う理想(?)から、「タキオン」と言う架空の物質が生み出されました。
「もしも物体が光速を超えるとどうなるのか?」その、「光速を超えた物体」として、「タキオン」を生み出したのです。
さて、その計算の結果は?
実は、「タキオン」は、光速より速く動ける代わりに、光速より遅くなる事は出来ない、と言う結果になったのです。
また、「タキオン」は、「過去に突き進む物体になる」とも言われています。
何故でしょうか?
これは、先ほどの理由と全く同じ。そう、タキオンを光速より遅くするためには、無限の力が必要になるのです。
物体の運動を止めるためにも、エネルギーが必要になります。
タキオンの場合、光速ギリギリまで遅くする事は可能ですが、光速にするためには、無限大の力が必要になるのです。
また、過去に突き進む理由ですが、これは、「タキオンが光より速い」と言う事を考えてもらえば、すぐにわかります。
光だとわかりにくいので、音で説明しましょう。
例えば、あなたが超音速(音よりも速い速度)で走っているとします。
そこで、遠くにいる友人に向かって、「あ、い、う、え、お」と叫んだとします。
普通なら「あいうえお」と聞こえるのですが、何しろあなたは超音速で疾走中。
あなたの発した「あ」の音は、あなたに追い抜かれる事になります。
すると、「い」と発音した時、この「い」の音は、「あ」よりもあなたの友人の近いところにあるのです。
同様に、「う」は「い」より友人に近く、「え」は「う」より、「お」は「え」より友人に近いところにあるのです。
すると、友人の耳には、あなたが「お、え、う、い、あ」と叫んだように聞こえます。
タキオンでも、これと同じ事が光で起こります。
地上100mから、あなたに向かって、タキオンが降って来たとしましょう。
地上100m地点で、タキオンからあなたに向かって、光が発されます。
しかし、タキオンは光より速いので、この光が地上90m地点に来る頃には、タキオンはそれよりもっと低い位置に来ています。
そして、あとは、先ほどの音と同じ事が起こります。
つまり、あなたの目には、「タキオン地上1m地点の光」「タキオン地上2m地点の光」「タキオン地上3m地点の光」…と言う順番で、光が飛び込んでくるのです。
すると当然、あなたには、タキオンが空から降ってきたのではなく、自分の目の前から空高く昇って行く様子が見えます。
本当は落ちてきているのに、目には昇って行っている様に見える…。
ここから、「タキオンは過去へ突き進む物体になる」と言われるのです。
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