種無しスイカの作り方
一時流行った「種無しスイカ」。
通常、スイカは種があるものなので、このスイカは当然、人工的に生み出された物、と言うことです。
では、どのようにして作るのでしょうか?
その前にまず、「種とは何か?」です。
生物学では、種の事を「種子」と呼びますので、ここでも種子としておきましょう。
種子は、果実の中にあります(これはスイカなどの「被子(ひし)植物」と呼ばれる植物の話で、松など「裸子(らし)植物」と呼ばれる植物には当てはまりません)。
そして、その果実は、花の時の「めしべ」と呼ばれる部分の根元にある、「子房(しほう)」と言う物が変化した物です。
種子の元は、この子房内の胚珠(はいしゅ)と言うものの、更に奥にある卵細胞(らんさいぼう)と言うもの。
それと、花粉の中にある精細胞と言うもの(この2つを合わせて「生殖細胞」と呼びます)。
この2つがくっつく(受精する)事により、胚珠が種子に、子房が果実になります。
種無し果実と言う物は、この受精を起こさせずに、子房を発育させる方法を用いているのです。
そして種無しスイカの場合、「正常な生殖細胞を作らせない」と言う方法を採っているのです。
その具体的方法を、説明しましょう。
まず、普通のスイカの芽にコルヒチンの薄い水溶液をつける処置をします。
コルヒチンとは、アルカロイドと言う窒素を含んだ特殊な塩基性成分(アルカリ性の物質)の一種。
お茶に含まれるカフェインや、麻薬であるモルヒネ、コカイン、そしてタバコで知られているニコチンなどの仲間です。
これにスイカの芽をつける処置をすると、体細胞(生殖細胞以外の細胞)の染色体(せんしょくたい/細胞内にあるDNA情報を持つ物)の数が、普通のスイカの2倍になります。
つまり、通常のスイカの染色体の数が22本(2倍体と呼ばれ、2nと表記します)なのに対し、コルヒチンで処置したスイカは染色体の数が44本(4倍体、4n)になるのです。
この44本の染色体を持つスイカ(4倍体)に普通のスイカ(2倍体)の花粉をつけて受精させると、3倍体の種子が出来るのです。
そしてこれこそが、種無しスイカの種子なのです。
3倍体、と言うことはつまり、染色体の数が奇数(資料に載ってませんでしたが、たぶん33本?)、という事になります。
先に述べた生殖細胞と言うのは、体細胞と区別されているように、少し特殊な細胞で、実は生殖細胞の染色体の数は、体細胞の半分なのです。
通常のスイカならば染色体は22本なので、生殖細胞の染色体の数は半分の11本ですが、33は半分にする事ができません。
つまり、3倍体のスイカは、この生殖細胞を作る事が正常に出来ないのです。
では、もしこの3倍体のスイカの花に、普通の2倍体のスイカの花粉をつけると、どうなるでしょう?
こうすると、3倍体のスイカは、受粉の刺激により子房が膨らみます。
が、生殖細胞である卵細胞が無いので、当然種子は出来ません。
そしてこのまま子房が膨らみ続けると、見た目には綺麗な果実、つまりスイカが出来上がります。
これが、種無しスイカの正体なのです。
ですので当然、種無しスイカは種子を作りませんが、種無しスイカの種子ならある、と言うわけです。
ちなみに、このような植物は天然にも存在し、ヒガンバナ(彼岸花)がその1つです。
これらは、球根で増える植物です(たぶん、チューリップもそうだと思うのですが、調べても何も書いてありません。どなたか、ご存知なら教えてください)。
戻る