アクティブ電子広告板による視覚障害者のための誘導システムの提案
鳥原
信一 *1 *2 本田 良司 *1 鈴木 和洋 *1 久世 和資 *1日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所*1 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科*2〒
242-8502 神奈川県大和市下鶴間1623-14日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所 (LAB-S72)пF
046-215-4596 E-mail:torihara@jp.ibm.comあらまし
日本において、トーキング・サインなどの視覚障害者のための誘導システムはなかなか普及しない。それは、インフラの統一および設備投資が必要であるからだと思われる。我々は、アクティブ電子広告板(アクティブ・ポスター)および視覚障害者のための誘導システムを提案する。従来の電子広告板とは異なり、インターネット接続され、ユーザとのinteractionにより、ユーザの好み、個性(障害の種類なども含む)、時間、場所に応じてコンテンツを提示する。目的地(コンテンツに表示されている店舗など)の指示をすることにより、アクティブ広告板間の情報処理により、的確な誘導が可能である。なによりも、電子広告板は主に営利目的であるため、視覚障害者・誘導システムだけのためにインフラへの設備投資が不必要となると思われる。キーワード
視覚障害者、誘導、歩行介助、ナビゲーション、電子広告板A Guiding System by
“Active Poster” for the Blind and Visually ImpairedShinichi Torihara
*1 *2 Ryohji Honda *1 Kazuhiro Suzuki *1 Kazushi Kuse *1Tokyo Research Laboratory, IBM Japan, Ltd.
*1 Graduate School of Media and Governance, Keio University*2IBM Japan, Ltd. Tokyo Research Laboratory
1623-14 Shimotsuruma, Yamato-city. Kanagawa. 242-8502 Japan
Tel : +81-46-215-4596 E-mail : torihara@jp.ibm.com
Abstract
Keyword
the blind and visually impaired, guide, walking assistance, navigation, electronic poster
本稿では、アクティブ広告板 (Active Poster : AP) とそのユニバーサル・デザインを考慮した応用例、APによる視覚障害者のための誘導システムについて提案する。従来から研究されている視覚障害者用誘導システムであるTalking Sign (話す看板) [1] [2]を紹介しその限界、問題について述べる。
インターネットに接続された複数APは、ユーザーとは短距離通信などによって、個人識別、場所・時間・状況および個人の好み、属性(性別、年齢、障害の有無、種類、程度)に基づいて最適なWebページを最適な形式でユーザーに提示する。
これらのAPの概念とその適応能力について、特に視覚障害者のための道案内、誘導システムへの適用につて述べることにする。
Talking Sign (
話す看板)は、各所に埋設されている赤外線発信機と視覚障害者が携帯する赤外線受信機からなる。受信機の頭を左右40度(計80度)振り、送信機からの赤外線が受信機の中心角に入ると音声案内が明瞭に聞こえる。図1参照。
図
1 Talking Signのガイダンス音声受信畠山1999)[1]によると個人用音声情報システムの設計方針に次のものが挙げられている。
我々は、現状のTalking Signの問題を次のように分析する。(一部は、上記の設計方針に含まれているものがある)
問題1. 目的地までの地図を知っている必要がある
5
メートル10メートルなどの間隔埋設されている赤外線送信機であるトーキング・サイン(話す看板)ごとの歩行誘導となる。あらかじめ、地図を頭に入れておく必要がある。別の方向に進んでいても、何の指示もされない。問題
2. 同一情報の発信である交差点の信号によって、音声が変わるが、情報は片方向通信であり、どのような状況でも、誰にでも同一の情報の提供により誘導する。
問題
携帯型赤外線受信機を左右に40度振ることにより、中心の受信より、明瞭な音声とが分かる。つまり、方向の方向の指示(認識)には優れているが、明瞭に聞こえている方向に進み、明瞭に聞こえなくなったり、別の音声が聞こえると、目的地だったことが分かる。5メートル内外のところで、目的地を同定できないことがある。
インターネットに接続されたアクティブ・ポスター(アクティブ電子広告板)は、表示装置、音声出力装置そして赤外線送受信機、Bluetooth [3]など短距離無線からなる。アクティブ・ポスターは、駅、空港、ショッピング・モール、信号機、電柱などあらゆる所に置かれている時代が到来する(ことを望む)。
アクティブ・ポスターは、アクティブ・ポスター・サーバーによって制御されている。このサーバーは、Webサーバーであり、Proxyサーバーである。アクティブ・ポスターは、いわばWebブラウザである。ユーザーがもつ赤外線送受信機(携帯電話、PDA、ノートパソコン等)または、Bluetoothなどの短距離無線機との通信を行い、情報をサーバーに送る。
図2.にシステム概念図を示す。

図 2 アクティブ・ポスター概念図
ユーザーの持つ短距離通信機は、アクティブ・ポスターに接近すると個人識別を行う。アクティブ・ポスターは、現在の時刻、当該のアクティブ・ポスターの場所とあらかじめ登録されている個人の好み(趣味)、個人の属性(性別、年齢、障害の有無・種類・程度)に応じてアクティブ・ポスターの表示装置、音声出力装置、短距離通信装置に最適なホーム・ページ(当然ながらその場所に関連する)を提示する。
公共の場であるため、プライバシーに配慮が必要である。(情報をanonymous化したり、携帯電話にのみ通知するなど)。
このようにアクティブ・ポスターは、場所・時間・状況(PTO)に応じてアクティブに広告、広報を行う。例えば、昼食時間帯にあるアクティブ・ポスターの前を通りかかると、個人の好みに応じて近くのレストランを紹介するホーム・ページがPop-upされる。
図 3. URL選択のための要素
公共の場に設置されるものは、特にユニバーサル・デザイン的考慮が必要である[4]。 また、ユニバーサル・デザインとしてのユーザー・インターフェースを実現するには、「マルチ・メディア」及び「マルチ・モダル」がキーワードとなる[5]。
ユニバーサル・デザインの観点からの発想であるアクティブ・ポスターにおいては、高齢者や弱視者が近づくと、拡大文字、ハイコントラスト表示でホームページが提示される。また、視覚障害者がアクティブ・ポスターのそばを通過しようとすると、コンテンツが音声で提示される。
本稿で提案している視覚障害者誘導システムも一般の方々の道案内、店内案内システムとしての利用が前提である。非常時には、防災非難システムとして十分利用可能である。
視覚障害者は、スクリーン・リーダーにより、PCのアプリケーションを利用できる[6] 。また、インターネットの音声ブラウザを用いて、サイバー・スペースに乗り出すことができる[7]。しかしながら、いったん机の上のデスクトップPCから離れると情報を入手できず、うまく処理することも困難となる。場所に付着している情報につての研究および支援技術の製品化が望まれる。
図4.に情報の所在について図示する。

図 4 情報の所在
前節2.2で記述したトーキング・サインの問題点を解決するところから述べることとする。
インターネットに接続されたアクティブ・ポスター(アクティブ電子広告板)などは、表示装置および(または)音声出力装置と、短距離送受信機からなる。
アクティブ・ポスターを制御しているのが、アクティブ・ポスター・サーバーである。このサーバーは、時間、それぞれのアクティブ・ポスターの場所、さらに、あらかじめ登録されている、個人の好み(preference)および個人の属性(年齢、性別、障害の有無、障害の種類・程度など)を把握している。短距離通信機能を持つ携帯電話、PDA、ノート・パソコンを持ち、アクティブ・ポスターに接近すると、アクティブ・ポスター・サーバーは、時間、場所、個人識別を行い、好み、年齢、性別などにより、適切と思われるコンテンツ(ホーム・ページ)を提示する。例えば、弱視者には、拡大文字で、ハイコントラスト表示を行う。視覚障害者には、テキスト音声合成により、コンテンツを音声で読み上げる。
視覚障害者が、提示されたホーム・ページで指示するか、誘導システムのホーム・ページで指示すると、誘導システムが始動する。(視覚障害者には音声で誘導が行われるが、健常者にも道案内システムとして使用できる)。アクティブ・ポスター・サーバーは、複数のアクテブ・ポスターに的確な情報を伝達して、目的地まで案内する。
問題1の解決
(目的地までの地図を知っている必要がある)
目的地までの地図を知らなくても単独歩行ができる。初めてのところでも行くことができる。別の方向に進んでいる場合は、その旨が伝えられる。いたるところにアクティブ・ポスターがあることを前提としている。
問題2の解決
(同一情報の発信である)
アクティブ・ポスターとは、双方向通信であり、アクティブ・ポスター・サーバーは、アクティブ・ポスターを通じて情報の収集と解析を行い、時間・場所・状況に応じて的確な誘導を行う。
また、視覚障害者同士での待ち合わせにも有効である。
問題3の解決
(目的地に着いたことがはっきりと分からない)
目的地にあるアクティブ・ポスターに近づくと、その旨の音声案内が流される。誘導終了を指示するまで音声がなっているので、到着したこと容易に分かる。(タイム・アウト機能も必要であると思われる。)
駅、空港、ショッピング・モールの案内システムが構築できる。非常時の「防災非難システム」として、安全なルートで、分散させて、安全な場所に誘導可能である。
図 5 アクティブ・ポスターによる視覚障害者誘導システム
インターネットに接続され、ユーザーとのinteractiveなユーザー・インターフェースによるユーザー認識、場所・時間・状況・好み・属性に基づくアクティブ・ポスター(アクティブ電子広告板)について述べた。
ユニバーサル・デザインの観点で発想すると自然と視覚障害者も利用可能な道案内システムとなることを示した。視覚障害者のバリアーとなっている場所に依存した情報 ( Location dependent Information )をインターネットで処理することにより、視覚障害者のQOL(Quality Of Life)を高めることができるであろう。
今後は、トーキング・サインの長所でありアクティブ・ポスター改善考慮点である細かい方向の指示および「仮想の点字ブロック」等について研究する。
参考文献
http://homepage2.nifty.com/htakuro/paper/
HIS99/HIS99.htm
http://www.ski.org/Rehab/WCrandall/General/
INTRO.HTM